後に侯爵家の悲劇と呼ばれる事件は、隣国の王子の一言から始まった──。
幸せな侯爵家に生まれたフェリアナスは、何不自由なく10回目の誕生日を迎えるはずだった。
優しい両親に可愛い弟、将来を約束された幼馴染の婚約者、数は少ないながらも友人に恵まれ、幸せに満ち溢れていた。
しかし、誕生日の前日、侯爵家は悲劇に見舞われる。クローブ家に代々伝わる伝説の家宝が奪われ、一族もろとも惨殺されるという世紀の大事件が起きたのだ。
幸せな侯爵令嬢から一転、友人の別荘へと出かけていたフェリアナスは、唯一生き残った悲劇の令嬢になると同時に、世間の注目を一心に浴びることとなった。
連日続く報道に傷つき一時は心を病んだフェリアナスだが、復讐を糧に再び立ち上がる。
時が経ち、水面下で復讐の機会を窺い続けたある日、フェリアナスに思いもよらぬチャンスが訪れた。
侯爵家惨殺の主犯と思われる隣国王子が妃候補を探していて、フェリアナスを引き取った伯爵家にもその話が舞い込んできたのだ。
復讐を胸に誓う手毬と王子の駆け引きが今幕を開ける──。