てち

刺さってくれる人がいるならよきかな(^o^)👌

私は……

友達のメアリと奇妙なサーカス団を観に行った時そこからすべてが変わる
私は普通の日常を送りたかったのに……
普通の女子高生と女を餌にする化け物が織り成す世界…
私は最後までこの化け物のことを理解できるだろうか?


「やだっっ!あっ……」ズブッと首筋に牙が埋まる。ゾワゾワとして苦しい。「あっ…うぅっ…やっ…」と声が自然と漏れてしまう。「りり、逃がさないよ。」と低く魅力的な声が響く
抵抗しようとしても体の自由がきかない。もがきたくても指先ひとつ動かせずに、声だけ漏れてしまう…
私はこの人を許さない、私の世界を壊した人……




「もう秋の匂いがするね」と肩まである赤毛を風になびかせ、ブロンドの瞳を輝かせる親友のメアリが言った。17年目の秋。毎年同じように青葉が青臭くなくなって少し老いてくるような、大人しくなった匂いがする、いつも通りだった秋の季節に私の人生が大きく変わった。

私は幼い頃から感情が昂った時に発する言葉はどんなものにも影響を与えてしまうという何とも厨二臭いでたらめな力が出てしまう。両親は少し気味悪がることはあるが、大叔母様がそれと似たような力があったらしく、遺伝らしい。いまこの気持ち悪い能力のおかげで人とは上手く話せないし、みんなには気持ち悪がられて、何かある度に「魔女のリリのせいだ」「呪われる!!」と言われてそりゃもうやっかいだ…。
だけど、親友のメアリは幼少期からいつも話しかけてくれる明るく可愛らしい幼なじみだ。けれど彼女にはオカルトが好きだったり無類の爬虫類好きといった変わった趣味が強くある。
「ねぇ、明日の22時から《ディアボロ》という人とは変わった化け物が織り成すサーカスが催されるんだって!!未成年は観られないけど、こっそりみにいっちゃおうよ!!」内容には引くがいつものように気軽に話しかけてくれる。「えー、こわくない?」「大丈夫!後ろの席で見ればバレないよ!………本当は近くで見たいけど!」「私はあんまりそんなの観たくないな………」 「お願い!リリしか頼めないの!!ね?行こ??」
会話がテンポよく進み、少し嫌な気持ちになりながら親友のワガママに付き合わされるのを致し方なく同行するのが日課になっていた。私は「今日もいつものわがままにつきあってるなぁ…」とそう感じていた。

このサーカスとの出会いが運命を掻き回し、奪い囚われるものだとこの時には知る由もなかった。

21時50分、木々が生い茂るいつもの公園でメアリと待ち合わせをして、ディアボロサーカス団へ向かった。パパたちには内緒で抜け出したからバレたら大目玉だ。
サーカスは大団円で終わった。楽しい双子のピエロの演目、美少女による綱渡り、猫の被り物の青年のナイフ投げ。蛇使いの少年による蛇芸当、そして最後はコウモリやタランチュラを従わせて艶やかに踊る男性と助手の美しいひと。
どれも私にとっては妖艶で気味が悪かった。が、メアリは大興奮。「かっこよくて素敵で引き込まれた!もう感動だよ!!」
「でも、人としては気持ち悪くなかった…?私は特に蜘蛛が嫌いだから最後の演目がやだったな…」と感想を言うとメアリは全否定。「最後の蜘蛛の演目が一際目立っていたじゃない!!もう惚れ惚れしたわ!!」
メアリは大興奮だった。その後も興奮は冷めぬままいつもの公園で1時間くらいお喋りをしていた。主にメアリは興奮話だったけれど。
お喋りが続いた後にメアリは少し悩んでいたみたいで「今日はもう遅いから明日話したいことがあるの…一生のお願いだからリリには聞いて欲しい!」と言われ、もう23時も過ぎていたため「わかったよ、明日ね」とお別れを言って私は家にコソッと親が寝静まる温かい家に帰った。
次の日の放課後、またいつもの公園でメアリに呼び出された。
「お願いリリ!あのサーカスの一員になりたいから一緒に懇願しに来て!!」「はぁ?!!?」思わず疑問が口に出た。
「あの気味悪いサーカスの一員に!?なんで!?怖くないの??学校は??」(私は??)…最後の言葉は口に出せなかったけど疑問の限りをメアリにぶちかました。
メアリは「あんなに憧れて胸が高鳴ったのは初めてだったの!!お願い、親友として見届けて」の一点張りだった。
何を聞いても、どうにもこうにも、メアリはディアボロサーカス団に入りたいと、きかなかった。
こうなるとメアリは頑固者で手をつけられない。仕方なく、昨日よりも早い時間に、サーカスに忍び込むことにした。
上映時間外のサーカスの舞台は薄暗く、霧がかかった樹海よりも気味が悪かった。
「ねえ、メアリ…また開演した時にでも一座に加わりたいって団員の誰かに話しをすれば?」と聞くと「明日で次の街に出てしまうから今日しかないの!!!」と圧されてメンバーを探すことに。
舞台の台座まで来るとメアリは嬉しそうに駆け上がり歌を披露した。メアリは幼少期から歌が上手く、カナリアのように鳴き、水のように通る美しい歌声だった。
「私にはこの歌があるわ!だからきっと気に入られる!!この団員になりたいの!!早くここの団長に話しを通さなきゃ」と甘味を食べたような可愛らしい笑みを浮かべて話していた。
その時だった。大きい蜘蛛がメアリの首に襲いかかり、歯を立ててゴリっと噛み付くところは。
私は一瞬の出来事で目を疑った。メアリはさっきまで美しく歌い、私に話しかけていた。その一瞬の隙に目の前が鮮血に彩られた。

「メアリ!!」私はそばに駆け寄った。首からの出血が尋常じゃない。心臓がドクドクと脈打つ音と同じ速度で血が溢れ出てくる。「あぁ、メアリ、どうしたらいいの、どうしよう、誰か助けて!!」と口々に叫ぶと蜘蛛が、あのリリの首を裂いた蜘蛛が目の前まで来ていた。それも1匹では無い。目の前の舞台に広がるほどいたのだ。おそらく30匹はいたであろう。その気持ち悪い蜘蛛が一斉に私を目にとらえていたのだ。あぁ、蜘蛛に囚われた蝶はこんな気持ちかと一瞬考えたところで我に返った。死にたくない。私は命を声に乗せて目をつぶって叫んだ「消えろ!!!!!!」と。

8秒間目を閉じていた。一向に死ぬ気配も噛まれる痛みもないため目を開けると蜘蛛はちりじりに消えていった。(虫は死ぬ時はやっぱり上を向いてくたばるんだな、とぼんやりと思いながら)ハッとした。
そうだ、メアリ!メアリは私の腕の中で虫の息だった。やはり血が止まらない。「メアリ、お願いだから生きて!ごめんね、私が早くに止めていれば…」私はどうしようも出来ず泣くばかりだった。
ふっと目の前に影が伸びた。見上げると眉毛から切りそろえられた闇色の黒髪に、黒いサングラスをした長身の青年が立っていた。メアリとこっそり見に行ったあのサーカスで見た気味悪い蜘蛛を従える青年だった。
青年は聞いた。「何をしてるの?僕の蜘蛛は?」私は食い気味で答えた。「メアリがあなたの飼っている蜘蛛に噛まれたの!お願い助けて!!」私は必死に助けを懇願した。
青年は「勝手に忍び込んで勝手に噛まれたのだから命が消えるのは仕方がないでしょ。それより僕の蜘蛛は?」と冷たく言い放った。
私は頭から親指の爪まで冷たく、けれど熱く、よく分からない感覚になりながら叫んでこう伝えた。「あなたの蜘蛛は私の言葉で消え去ったの!何でもするからメアリを助けて!親友なの!!お願い!!」と。
蜘蛛の青年は「へぇ」と一言い、私の顎を掴み、吐息のかかる距離まで攻め寄って私に言った。「君を僕たちの物にしてあげる。それを条件に、この人間を助けてあげるよ」
どんな悪魔の囁きでも天の一声に聞こえた。私には迷うすべはなかった。
「物にでも何でもなってあげる。メアリを助けてくれるなら!!」私はニヤリと笑う蜘蛛の青年の手を掴んだ。「…っ」青年ははっとしたような少し戸惑ったような表情しをしたけれど、煙のような表情を惑わせて笑った。
蜘蛛の青年はメアリの口に解毒剤のような薬を飲ませながら私に言った。「明日のこの時間に迎えに行く。今日のことは誰にも言わないでね」
と。
私はそこからグニャリと視界が滲み、意識を失ってしまった。気を張っていたのか、私の言葉で蜘蛛を撃退した力で消耗したかわからない。体が重く、眩しさで目を開けて起きたら自分の部屋のベッドで朝を迎えていた。


「嫌な夢だった……」本当に最悪な夢だった……私があのサーカス団に何にでもなってあげる??夢もいいとこだ。
背伸びをし、ベッドから起き上がって身支度を済ます。
「おはよう!」パパママゆうとも挨拶を済ませて朝食へ。
「ゆん、トマトも食べなさい!大きくなれないよ!!」ゆん「うるせぇな!!デカ乳ばばあ」と喧嘩もする仲良い兄弟❌
そういった会話を楽しみながら学校へ……



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