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織江 零

おりえ れい

【盲目】に関する話



(あとがきも含んでいるので、念の為全て読んだ方推奨)



その日は土砂降りで、バケツを思い切りひっくり返したかのような酷い天気だった。
午後10時、アルバイトを終えた私は、傘を懸命に持ちながら帰路についていた。
いつも渡る歩道橋の階段を登ると、普段なら誰もいない人影がそこに佇んでいた。
傘もささず、生気を失った姿で歩道橋の下を見つめている男にいたたまれなくなり、私は持っていた傘を差し出した。
単なる気まぐれで、男を引き留めるきっかけになればと思っただけだったのに、その日から彼に執着されるようになる。
彼はのちに私の前に現れ、こう言った。
「俺の恋人になってくれない?」
脈絡のない言動と突飛な行動に恐怖した私は、彼から何度も逃げようとするが、その度に会いに来た。学校にだって、バイト先にだって。
だが、私を傷つけようとする風はなかった。ただ私と一緒にいたいだけ、らしい。
そのうちに私も彼に心を開くようになり、気持ちを交わすようになる。
だが、その男の裏には黒く莫大な秘密があってーーー



と、いうのが当初思い描いていた【盲目】のストーリーでした。言わば前駆体。
ですが途中まで書いてみたはいいものの、「……これ、何がおもろいんや?」と手が止まってしまいました。
出汁しか入れてないスープみたいなぼんやりした内容にしかならず、何か微妙。
このまま書き進めても仕方ないと思い直し、ガラッとストーリーを変えることにしました。
そんでもって出来上がったのが今回の作品、ということになります。
こうして見ると大分違う。
主人公の設定(大学生であることや性格)、男の過去、所々のセリフなど、同じ所は部分的にありますが。



ただ、1番変わらない所は”愛するはずが無いのに、愛してしまった”というコンセプトです。

今回の作品で言うなら、響也に強姦され更に自由を失った、しかも彼は人殺し、という面があるというのに、彼を愛してしまったという矛盾。
その矛盾を抱えたまま、盲目的な恋をする……
【盲目】というタイトルはここから来ています。



と言いつつも、”盲目”という意味は1つに限らないと思っています。
悪い事実から目を逸らした、目を塞いだ。
それは自分で塞いだものもあれば、響也に塞がれたものもある。
また、盲目的といえるのは雪乃だけじゃなく、響也にも当てはまる。
……など。
何を”盲目”と思うかは読者様次第。



脱獄犯と雪乃に幸あれ。



長くなりましたが以上となります。
ここまで読んで下さり、本当にありがとうございました。
またどこかで。

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