VRMMOゲーム『アークノース』。
最新テクノロジーがふんだんに取り入れられたこのゲームは、視覚、聴覚、嗅覚、味覚…と、現実さながらの感覚をもってプレイする事が出来た。
このゲームは配信されるやいなや子供から大人までをも虜にし、社会現象を巻き起こす程の大人気ゲームとなった。
……しかし、それは一年前の話だ。
現在は年齢規制や時間規制が敷かれ、不自由なゲームとなってしまった。
その為、未だにプレーを続けているのは≪≪ほんの一握り≫≫しかいない。
『アークノース』は、あまりにもリアル過ぎる世界観だった為に、依存しすぎて現実世界に戻って来られなくなった子供達や大人達により、別な意味でも社会現象を引き起こす事となってしまったのだ。
自分の精一杯を注ぎ込んで作ったゲームが配信を止められ…これ以上無い位に絶望した花は、死に場所に自らのゲームを選ぶ。
天涯孤独の花が死んでも悲しむ相手はいない。
幸か不幸かゲームで儲けたお金が腐る程あった。
死後の自分が見つかった時には、お金で解決してもらう手はずを整えた。
弁護士の佐藤さんに遺言も残した。
だから大丈夫。
花が臨まない限りログアウト出来ない様に設定もした。
仮想的空間の中で自殺をする為の花が、もう現実世界に戻る事はない。
花はVRのヘッドホンを装着する――。
ゲーム内で無謀な戦いを繰り広げて傷だらけの花と、スローライフ満喫中の少年サトルが出会う。
傷だらけの花を助けようとする智を無視して去る花。
何度避けて逃げても好意を持って近付いてくる智。
無表情だった花が、優しく穏やかな智と交流していく内に心を取り戻していく。
智と一緒の時間を過ごすようになり、少しずつ表情を取り戻す花に残された時間は僅か……。
現実世界で死に向かっている花は、ゲーム内で倒れる回数が増えていく。
そんな中、花は智が自分の作ったゲームの被害者の家族だと知り、智も花の抱えている秘密に気付く。
花の目的がゲーム内での自殺だと知った智は、現実世界の花を探し始める。
――智が辿り着いた先に待ち受けているのは……白い顔でベットの上に横たわる現実世界の『桜井 花』か、それとも……?
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