おまっさんさんへ
拙著「あの日の二人はもう居ない」への更なる追加スタンプ、ありがとうございます。
すでに後日譚、「遠い海から来たエア・メール」および「真夏の風の中で」も読んでくださっているおまっさんさんの目には、「あのふた」を再読する事で本編の主要キャラ、コスモ、歌祈、毅が、「ああ、こいつはこの時、これこれこんな事を考えて動いていたのか」と、立体的に見えているのではないかと原作者としては恥ずかしくも都合よく妄想していたりしています。
実は「まなかぜ」には、二十代の頃から構想していたいわば叩き台のような大雑把な筋書きがあるにはありました。当初の構想ではそのバンドは男性四人組で、ボーカルが親と仲が悪く、父親と喧嘩して家出、メンバー最年長のドラムの家に居候する、といった、ストーリー展開に今もうひと捻りが足りないツマラナイお話だったため、執筆に二の足を踏んでいたのでした。また当時の自分の技量では長編小説をまとめるなんて事はほとんど不可能に近く、日の目を見る事なく構想のまま二十年近く眠っていたのです。その「不可能」を「可能」にしてくれたのは、「あのふた」で脇役として大いに活躍してくれた歌祈という名の架空のキャラでした。それは「歌」に「祈る」と書いて「かおり」と読むこの名を考案した後の事でした、「この名前を『あのふた』でワンオフにしてしまったらもったいない」と思い立った事から始まったのです。構想のまま眠っていた男性四人組のバンドの物語に運命的に交わる女性ボーカリストであり、ヒロイン兼もう一人の主人公として登場してもらおう、そしてコスモのロサンゼルスでの結婚式も、歌祈の視点から描いてみようと閃いた事から、「まなかぜ」は生まれたのでした。
最近つくづく思う事があります。「やはり自分に壁を作るべきではない」のです。「どうせできっこない」、「やるだけ無駄」、そういったネガティブな発想が、一体いくつもの夢を壊してきた事でしょう。たとえ二十年かかったとはいえ、完成に漕ぎ着けた事は事実です。また、二十年という長きの間に身につけた様々な物があったからこそ良い物が書けたという見方もできると思うのです。
同じような視点から、現在、毅を主人公にした物語も大雑把ではありますが実は構想していたりします。実は「あのふた」の主要キャラ四人の中で原作者が一番好きなのは毅なのです。想像力に限界はありません。そしてたとえ大勢の人でなくとも、応援してくれる人がいるというのは何よりの励みになります。
おまっさんさん、本当にありがとうございます。心より御礼申し上げます。
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