小夜子姉貴

 蝶が花と戯れるように、短い生命を抱いたものが、長く生きるものより焦ることなく、ゆったりと蜜を吸い、楽しみ憩う。

 それゆえに、あたしたちは蝶に見惚れる。  自己紹介させていただきます。あたしは山口小夜子。昭和五十八年当時、十一歳。
 その年の四月に、父の転勤にともなって、鳥取からここ───横浜に越してきた。自己紹介はこれでおしまい。
 付け加えさせていただくなら、あとになってから嗚呼…