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七色の口紅から一際赤いものを取り出し、粘膜へ滑らせる。食むように動かした唇をパッと引き離せば、そこにはもう元の陰気な自分はいなかった。
ハイヒールを履いて街へ繰り出す。周囲からの視線を浴び、それが本来女性へ抱く下心であることに奇妙な優越感を覚えて口元が緩まる。わざと垂らして引いたアイラインと相まって柔和な雰囲気を醸し出し、更に視線を集めた。
今日もこうして夜の街へ出歩いて、ふわふわと色香を振り撒いて、そして優越感と背徳感を覚えたまま眠りに就くことが出来ればよかったのに。