わたがしみたいなパステル色の可愛いパーカーを羽織って、トースターからちょうどよく焼きあがった食パンを引き抜く。
そしてそれを咥えーー……玄関の扉を開く。
髪型、大丈夫、服装大丈夫。最後に心の準備もOK!
時計の短針が丁度八時を指した頃。十五分後に控える朝のHRを目指して俺はマンションの階段を駆け下りた。
家から学校までは片道三十分、今日も完璧な遅刻。
そして最も古典的で最高のシュチュエーション!
今日こそ、今度こそ来る!住宅街を駆け抜け目当ての曲がり角を見つけると少し速度を落とし、定番の台詞を口に出した。
「いっけな〜〜いっ! 遅刻遅刻☆」
高校三年生!古谷結斗、絶賛王子様募集中です!
……笑っちゃうだろ?
これはそんな俺が贈る、王子様を待つ「キミ」への物語だ。