追放聖女と元英雄のはぐれ旅 ~国、家族、仲間、全てを失った二人はどこへ行く?~

作者日之影ソラ

緑豊かな自然に囲まれたエストワール王国。
様々な種族が共存するこの国では、光の精霊の契約者を『聖女』と呼んでいた。
聖女となるのは王族の家系。
母親から引き継ぎ、新たな聖女となった王女ユイノアは、冒険譚に憧れる女の子だった。
いつか大きくなったら、自分も世界中を旅してみたい。
そんな夢を抱いていた…

 豊かな緑に囲まれた国があった。

 そこで暮らす人々は謙虚で、質素な暮らしをしていた。

 王は聡明であり、国民の期待に応えるため日々奮闘していたという。

 とても住みやすくて、特徴的な国だった。

 世界では差別の対象となっている亜人種たち。

 彼らを快く受け入れ、共存している国は数えるほどしかない。 

 さらにもう一つ、大きな特徴があった。


 この国には――【聖女】がいる。


 一般的に聖女とは、神の啓示を受け、神聖な事績を成し遂げた女性のことを指す。

 ここで言う聖女は、一般的なそれとは異なる。

 王家の血を引く女性は代々、光の精霊と契約をする資格を持っている。

 光の精霊は、他の精霊の中でも強力かつ神聖で、畏れ敬わられていた。

 そんな存在と契約できる人間は、神に選ばれた人なのだろう。

 と、大昔の人は考えたらしい。

 以来この国では、光の精霊と契約できる女性を【聖女】と呼んだ。


 そして私はこの国……

 エストワール王国の王女として生を受けた。


 これから語られるお話は、私に起こった悲劇。

 幸せだった日々の終わりと、意図せず放り出された世界を巡る旅路。

 悲しくて、辛くて、一人と出会って。

 いつか報われる物語の――プロローグだ。