「知られている」のに「知られていない」~とある精神障害を患った女性の記録~

作者井上響

これは「知られている」のに「知られていない」病を患ったある女性の記録である

ヒビキは小学校高学年時代のとある「勘違い」がきっかけで男子達から目の敵にされていた
その後持ち上がりのような形で中学校に進学するがそこで「事件」が発生する

「事件」が起こったことによりヒビキは人間不信に陥り教室にも入れ…

これは「知られている」はずなのに「知られていない」病を患ったある女性が経験した事象の記録である


小学校高学年時代の「勘違い」が発端となり男子生徒から目の敵にされていたヒビキは毎日学校に通うことが億劫になっていた

それでも何とか小学校を卒業したヒビキはほぼ持ち上がりのような形で中学校に進学する

その中学校で起こった「事件」によりヒビキは完全な人間不信に陥ってしまい教室にも入れない状態が続くようになった


ある日中学校のスクールカウンセラーからの勧めで大学病院の精神科を受診したヒビキは

自らが精神の病を患っていることと自分がその病と生涯付き合わなければならないことを知る

それは衝撃的な事実だったが周囲の対応は変わることがなかった為にヒビキは絶望しながら毎日を過ごしていた


人間関係を築くことを極端に嫌うようになったヒビキはそのまま中学校を卒業して知り合いが殆どいない高校に入学した

最初の頃は事情を知らない生徒ばかりでこのまま高校を卒業するかと思われたがまた「事件」が発生してしまう


その「事件」以降ヒビキの中でプツンと何かが弾けたような気がした

遂に「やってはいけない」自傷行為を授業中に行ってしまったのだ


嫌われたまま高校を卒業したヒビキは遠方の地にある大学に進学する

そこで趣味として始めた同人音声劇やサークルでの小説執筆に生きる活路を見出し始める


大学の文芸サークルで小説の執筆を始めたヒビキの周囲には同じサークルに所属している

個性豊かな同学年の学生達が自然と集い始めたがそれでもヒビキは自分や他人を信じることが出来ずにいた


大学卒業後は地元へ帰り職を探していたヒビキだったが

なかなか上手くいかずにハローワークに通い続ける日々を過ごしていた

それでもヒビキはめげずに「いつかきっと職が見つかる」と信じていた


だが弟であるショウが進学先である大学を卒業したことに伴って

ヒビキは「もし弟が実家に戻ってきたら自分は必要とされない」という疑心暗鬼に陥る

そして自殺未遂やリストカットを何回も繰り返すようになってしまう


その度に母であるマリコから怒られたヒビキは「自分を大切にしてくれる人がいる」と

「生きる」ことを放棄しないで自信の力で頑張って生きていこうと決意する

そして大学卒業から数年後に現在の職場である「就労継続支援A型」の施設に入所したのだが…


小学校、中学校、高校、大学、そして社会人…

ヒビキの視点や考えは「精神の病」を通じてどのように変わっていったのか…