ここは、波動を操る能力者と希少鉱物『
周岐暦950年、二度目の全世界大戦に敗北した日本国は、戦勝国の一時的な占領を許した。しかし、戦勝国による改革によって戦後混乱期を脱し、復興を成功させた日本国は、瞬く間に高度な経済成長と技術革新を遂げる。敗戦国であった面影を完全に消し去ると共に、あらゆる戦争を放棄する国とあり方を定めた。
そして周岐暦1022年、大戦から70年以上経つ現在も、日本国の経済は緩やかになるも成長し続け、技術の発展は当時から衰えることを知らない。
長年に渡る技術成長の主な要因は二つ。
一つは『夜如石』の発見とその活用・技術転用。地表から深さ15,000m程、日本国のみで発見された、夜のような深藍色をした鉱物。
もう一つは、特異な力を発現させた日本国民。『
しかし、『夜如石』と『律振力』の本質は不透明のまま。
長年に渡る技術成長は国力を高め、世界のパワーバランスを崩した。その結果、日本国は力をつけたい世界諸国の標的となる。
日本国は、この状況を戦争を放棄した立場として黙認、はできなかった。
日本国はこれからの立ち位置、膨大な力の振るい方を定め導く存在の必要性を自覚、そしてその担い手として二つの政治的団体が現れる。その名は『立雎党』と『統橒党』。
日本国の投票率はほぼ100%を誇る。しかし投票結果に決定的な片寄りが見られたことは未だなく、日々、
二つの政党は、各々直属の軍事組織を有しており、これらが現在の日本国の自警を担っている。
東を管轄とする立雎党直属自警組織にある、能力兵特殊作戦部隊。それは、律振系統能力者の最上位『載級』と認められた能力者6名が所属する特殊部隊。この部隊に所属するもののみが組織の秘密作戦を担う。
この部隊の所属は皆の憧れ、しかしこの部隊に属せるほどの力を持てば身の振り方は一つのみ。
そんな部隊に所属する、日本一脳筋な高嶺の花と揶揄される一織と、端正な顔と才能を引き換えに感情を失くしたと評判の千歳。(不)名誉な肩書を持つ二人には、複雑な背景と難儀な因果も付き纏って、憧れの平穏な暮らしは訪れてこない。
なぜなら、無知なままに大きい力を持つ彼らに、世界は優しくないから。
しかし、無知も仕方がない。
自分たちの力の本質を掴むことすらままならないのに、
世界の本質なんて、片鱗すらも掴めるはずがないのだから。
これは、だれよりも普通に焦がれる彼らが、大きすぎる力を持つ故に世界の摩擦に身を投じていく物語。