「では、邪魔者は消えますので。お二人でごゆっくり」
ホテルのレストラン。窓から見える日本庭園。
向かい合わせの男と女。
仲人の女性はお約束通り、彼らを二人だけにした。
「あの。雪村さん?今って、対局中じゃないんですか」
彼女の質問。彼は俯いたままで答えた。
「いえ。自分は一回戦で負けたので」
「失礼しました」
しんみりした雰囲気。大人しそうな彼はやっと寝癖の頭で顔をあげた。
「あの……始まって早々、お願いがあるんですけど」
「なんですか?」
彼女は彼の長い髪の毛の間の瞳をじっと見た。
「破局にしていただけないでしょうか」
彼女の手元のグラス。氷がカランと揺れていた。