甘えんぼ棋士に恋の一手を

作者みちふむ

相田千明は見合い相手の年下の棋士、雪村大輔に『生涯を100パーセント将棋に捧げたいので、そっちから破談にしてくれ』と言われてしまう。しかしこの縁を喜んでいた祖母のために、千明は数回会ってから破談にしようと提案する。

そんな雪村は頭の中は将棋の事ばかり。しかも彼は自ら出演しているテレビ番組で共演し…

「では、邪魔者は消えますので。お二人でごゆっくり」



ホテルのレストラン。窓から見える日本庭園。


向かい合わせの男と女。


仲人の女性はお約束通り、彼らを二人だけにした。



「あの。雪村さん?今って、対局中じゃないんですか」


彼女の質問。彼は俯いたままで答えた。


「いえ。自分は一回戦で負けたので」

「失礼しました」



しんみりした雰囲気。大人しそうな彼はやっと寝癖の頭で顔をあげた。


「あの……始まって早々、お願いがあるんですけど」

「なんですか?」


彼女は彼の長い髪の毛の間の瞳をじっと見た。


「破局にしていただけないでしょうか」


彼女の手元のグラス。氷がカランと揺れていた。