炎が燃え盛り、
風が吹き荒れ、
稲妻が空を切り裂く。
まるで、この世の終わりかと思うほど、
様々な魔法が飛び交う。
だけど、ここはただの異世界ではない。
ここは、とある絵本の中。
それは、だれもが知るあの有名昔話――。
『桃太郎』
よく知る『桃太郎』のお話から
500年後の世界。
そんな場所に、わたしは突如召喚された。
そして、その世界で出会ったのは、
鬼ヶ島の鬼の子孫である、鬼人族の若頭――。
名を、紅遠。
「黙って俺に守られろ」
彼は、そんなわたしを力強く抱きしめ…。
「あまり鬼を煽るな。
どうなっても、責任取れねぇぞ」
「人間に、こんな感情を抱いたのは初めてだ。
華を独り占めしたくてたまらないっ…」
愛おしそうに、わたしの首元に噛みつく。
ここは、絵本の世界だけど…。
相手は、悪者のはずの鬼だけれど……。
――ますます彼に惹かれていく。
絵本の中に飛ばされた、孤独な女子高生
尾崎 華
(Hana Ozaki)
×
心優しき鬼人族の若頭
紅遠
(Kuon)
わたし、…鬼に恋してもいいですか?
◎執筆開始 2022.03.02