高校三年生の真理亜と春馬は幼なじみ。ドキドキすること、こそ恋の始まりであって恋愛だと信じ込んでいる真理亜。
『俺、真理亜の髪の毛に恋してんの』
そんな真理亜の長いふわふわの癖っ毛を美容師見習いの春馬はいつも綺麗にセットする。

ーーーーある日、恋がうまくいかずに泣いている真理亜に、ドキドキすること…



ーーーーねぇ、恋愛ってドキドキするものでしょ?



『はいはい』


ねぇ、ドキドキしなきゃ恋愛じゃないの!



『恋愛ってドキドキしなきゃダメ?』



何言って……ちょっと、春馬はるま聞いてんの?



真理亜まりあは真理亜でいいじゃん』




私のうなじから指を挿し入れて、春馬が、私のよそ見ばかりの癖っ毛を綺麗に魔法をかけていく。


『俺、真理亜の髪の毛に恋してんの』



意地悪く笑った春馬のその言葉の意味に、私はまだ気づいてなかった。

  



ーーーーあなたの指先は魔法みたい。



昔見た絵本の中のお姫様みたいに、あなたの指先で私に魔法がかかる。



ひねくれた、よそ見ばかりのお姫様には王子様なんて来ないと思ってた。



『夢、思い出してよ、真理亜』




幼い頃に願った、おままごとみたいな夢は、ちゃんとあなたが叶えてくれた。




そして、今日あなたの指先が、私を人生で一番綺麗に魔法をかけてくれる。




ーーーーうん、綺麗じゃん