尾崎放哉といえば種田山頭火と並び自由律俳句の代表的な歌人ですね。私が最初に思い浮かぶ句は「咳をしても一人」です。
「今日一日の終りの鐘をききつつあるく」は尾崎放哉が東京にいたころの句で今から100年強の昔のものですね。20代半ばあたりの作でしょうか。この句は彼の無常観が感じられるような気がします。

さて、こちら『黄昏に響く鐘』は一日の終わりに感じる哀愁と幸福が登場人物の境遇と重なりしっとりと情感を覚える作品でした。俳句からの着想ということで純文学に近いものも感じます。作中のイベント自体は青春ものとしてラノベなどでも見かけるものかもしれませんので読者も共感しやすいかと思いますが、作風などは明治などの作品を感じるものだったかもしれません。それが作者としても望むところである、この作品のよいところでしょう。