私は人間になりたかった

作者キラー

ただただ愛の欲しい主人公彩香。
初体験を終えていないことを恥じた。
そんな彩香の人生を描く。

私の名前は近藤 彩香こんどう さやか今年で25になった。私は、顔も普通性格も普通、友達もそこそこいるし、仕事だってきちんとしている。一般的に言う『凡人』ってやつ?

でも私は周りには言っていない、いや、言えない秘密がある。

それは『誰かに愛されたい』ということ。

高校3年生の頃、理壱くん(本名 倉木 理壱くらき りいちと1年ほど付き合っていた。初めての彼氏だった。理壱くんは優しくて、周りのことをきちんと理解できる。そんな人だった。今考えるとこんな完璧な人他にいたかなと思う。

でも私の考えは不純だった。

周りの友達には彼氏がいて、初体験ももう済んでいる。なのに私は、高校3年にもなって処女で彼氏すらいたことがない。そんな自分に恥ずかしくなった私は、当時告白してくれた理壱くんと付き合った。いい人だなとは思っていたし、私も少し気になっていたので悪い気はしなかった。でも、理壱くんは私と男女の関係を持とうとしなかった。理由は「俺、さやかのこと大切にしたい。だから、そこは焦りたくないんだ。」と言っていた。でも当時の私は自分が処女なことが恥ずかしくて仕方がなかったので、手を出さない理壱くんとは付き合えない。と思い別れてしまった。

多分、ここから人生踏み違えしまったのだと思う。

私は『愛』より『体』を選んでしまったのだ。そこからの私は酷いものだった。まず『誰とでも寝る』と噂の先輩に近付いた。でもその先輩も簡単に手は出してこなかった。なので私は、誰にも言わないという約束で「Hしたいんです。」と先輩に打ち明けた。

すると簡単に先輩は私を抱いてくれた。初めてだったので気持ちのいいものではなく、ただただ痛かった。でも私は初体験を終えたことに喜んでいた。ただ、そこに愛はなかった。

翌日学校に登校すると、友達がいつものように話してくれない。優しい理壱くんでさえ目を合わそうとしてくれない。意味がわからなかったので素直に聞いた。すると、友達の口からは「さやかさ、理壱と別れたばっかなのに、先輩にHしたいって誘ったらしいじゃん。ありえない。そんな軽い女だったんだ。」と冷たく話された。言わない約束だったのに。

1週間もしないうちに噂は校内を周り、あっという間に『ヤリマン』のあだ名が着くようになった。ヤケになった私は、色んな人と男女の関係を持った。ただただ何も考えずする性行為は、とても気持ちのいいものだった。それが恥ずべきこととも思わなくなっていたし、沢山の人に抱かれる私は、誰より愛されているのだと思っていた。

でも次第に男女の関係を持つ相手もいなくなり、同時に友達も誰一人いなかった。開き直って毎日1人ですごし、高校を無事卒業して、就職した。


高校を卒業してからも私はやりまん癖が治らず、色んな人と体の関係を持っていた。そんな私も、これが愛じゃないことにきづいていたので、本当の『愛』が欲しくなった。男の人の扱いには少し慣れてきていたので、次の彼氏はすぐにできた。でも結局、その彼氏も次の彼氏も体目当てだった。愛なんてなかった。

その時私は気づいた。私は人間じゃなくて、玩具なんだと。でも踏み外してしまったのは、私のせいだととっくの前から気づいていた。でも私は気づかないフリをして、全部近づいてくる男性のせいにしようとしていた。

そんな時私は、会社の上司潤さん(本名 上田 うえだ じゅん)のことを好きになった。仕事もできていつもテキパキしている。そして、なによりかっこいい。そんな潤さんは、会社の女性社員からモテていた。

でも私は諦めずにアピールし続けた。そこから私達は、二人で飲みに行く仲になった。飲みに行った日の夜はホテルで男女の関係を持っていた。私はもう、付き合えるのだと思っていた。

でもそれは間違いだった。

潤さんは私を『都合のいい関係』の女にしていた。潤さんには婚約している彼女がいた。

潤さんは私にこういった。「本当は気づいてるでしょ。自分が遊ばれてること。そんなんじゃ誰にも愛されないよ。」私はハッとした。

気づきたくなかった現実を突きつけられた感じ。私は泣いた。

自分は人間じゃない。

私は自分の恥から逃げようとしてただけなのに。どうしてこうなったのだろうか。真実は私にももう分からない。


自分を大切にすることがこんなに大切だと大人になった今やっと気づいたんだ。

そこからも私は誰かの玩具だった。

私は、人間に戻りたかった。

誰かに愛されたい。“玩具はもう嫌。”と、私は今日も誰かの玩具になる。