その花は、食べるのに適切ですか

作者A01

『私のために生きるのなんてやめて、自分のために生きて』

 それが、少女に彼女が言った最期の言葉だった。
教室内に充満する夕日の気配や、揺れる彼女の艶めいた髪。
すべてを思いだしながら少女は、朝陽のなかで飛び降りる。



ーーー『私のために生きるのなんてやめて、自分のために生きて』ーーー


少女は古びた屋上のベンチに腰掛けて、彼女の言葉を反芻はんすうした。




自分のために、か。




秋の気配が混ざった涼風が胸元のスカーフを揺らす。陽はまだ昇りきらない。足元でかさつく落ち葉の音で、少女は自分が裸足であったことに気づいた。




二人で塗りあった青緑色のペディキュアを、少女はまだ落とす気になれなかった。