花は月を見上げている《コミカライズ『帝都の使用人(めいど)は恋染むる』の原作改稿前原稿》

作者川上桃園

 優《すぐる》さまには美しい婚約者がいらっしゃる――

 ときは大正時代。財閥天蔵家で働く使用人のみやは、天蔵家の長男、優の婚約者月子に憧憬の思いを抱いていた。美しい未来の若奥様にお仕えできることを、みや自身も喜んでいた。だと、いうのに――。

 それは、一冊の本と彼女が長い髪を切り落としたことに…