弓張り月のメリーゴーランド/【完】

作者ぬーん

主人公の佐倉晃(さくらあき)は、唯一無二の親友で幼なじみの渡辺朔(わたなべさく)のお墓参りに来ていた。
そこで白髪の老人から「想い人に会いたくないか?」と晃は問われる。
弓張り月が終わるまでの間に、二人の思いは通じ合い、結ばれることは出来るのか。

八月三十一日


学生が夏休みの課題に追われている八月の終わり。

乗車しているバスが揺れる度に、佐倉晃の足元でビニール袋がガサガサと音を立てている。

電車とバスを二本乗り継ぎ、晃がぼんやり窓の外の景色を見ていると、最寄りのバス停がアナウンスされた。

ハッとした晃が降車ボタンを押そうとすると、出口付近に座っていた白髪の老人に先に押されてしまった。

宙に浮いた手を下げて、太股の上に置いてある供花を優しく抱える。

あの白髪の老人も目的地が同じ場所なのか、とても大事そうに花束を抱えていた。

車掌のアナウンスと同時に出口の扉がプシューと空気が抜けていくような大きな音を出す。







※この作品はフィクションです。

実在の人物、団体、事件等とは一切関係ありません。