ここは、限られた極一部の者のみが入店を許される完全会員制超高級遊郭 "櫻蔭館"。4つの階級に分けられた約50人の"妓女"達が寝食を共にし、毎日客をとる秘密の花園。そのトップに君臨するのは、"櫻"階級に属する四人の妓女達。その中に、一際異彩を放ち、純白の仮面を被る少女がいた。その名は、"栞"。これは…

  • コメント
  • スタンプ1
  • しおり4




きっともう、これが私の最期なんだと、そう思った瞬間に、あの人は現れた。




「君のその顔、すっごく綺麗。



僕の商品にならない?」




泥に塗れたその顔は絶対に美しくなんてなかった。涙に滲んだ瞳をあざ笑うように、目の前の男は笑っていた。



本当に楽しそうに、目尻に皺を寄せて笑っていた。それが至極当然のことであるように。



私は惨めだった。惨めで、情けなくて、終わりたいと思っていたこの人生に、せめて笑ってやりたかった。



この男と一緒なら、笑える気がしたんだ。

だから差し出された手を取った。




悪魔に魂を売った私に、怖いものなんてなかったんだ。