さよならは、また会うための合言葉

作者春日たくみ

ある日音信不通になっていた兄から連絡がきた。自宅の固定電話に。用件は婚約をしたので婚約相手と一緒に実家に挨拶に来たいというものだった。何かに縛られることを極端に嫌っていた兄が誰かと一緒になるなんて。ぼくには想像ができなかった。当日。ぼくは絶句してしまう。兄の変わりようと、兄が連れてきた女性を見て―…

まさか、兄の婚約者が、あのときの女性だなんて。


ぼくはあのときから進めないまま、なんとなく日常を過ごしていた。


兄の失踪した理由。君の本心。


ぼくは逃げてばかりいた。すべてから――。


これは、さよならから新たに始まる、ぼくの物語。