コーヒーをこぼしたら、上司の恋人になりました。

作者月森むつみ

生まれてこの方、自分より間抜けな人間を見たことが無い。こんな自分が尊敬する上司の秘書を務めさせていただいていることが申し訳なくて、異動を願い出れば、上司から返ってきたのは「お前にしか出来ない仕事がある」という言葉だった。




尊敬する上司は、眉目秀麗、

若くして執行役員の座に就く傑物だ。


対する私は、昔からドジで、

周りに迷惑をかけてばかり。


これ以上お荷物になりたくなくて、

秘書からの異動を申し出た私に突き付けられたのは、

二つの選択肢だった。



そして私は――、



「こちら、藤村なごみさん。

私の秘書で、最愛の恋人です」


「ふっ、藤村なごみと申します……!」



気付けば、上司の恋人になっていた。


……どうしてこんなことに?





「あのな、いくらなんでも、

好きでもない女に恋人のフリは頼まない」


「え……」


「俺、絶好の機会だと思ってるから。

覚悟しとけよ?」