尊敬する上司は、眉目秀麗、
若くして執行役員の座に就く傑物だ。
対する私は、昔からドジで、
周りに迷惑をかけてばかり。
これ以上お荷物になりたくなくて、
秘書からの異動を申し出た私に突き付けられたのは、
二つの選択肢だった。
そして私は――、
「こちら、藤村なごみさん。
私の秘書で、最愛の恋人です」
「ふっ、藤村なごみと申します……!」
気付けば、上司の恋人になっていた。
……どうしてこんなことに?
◇
「あのな、いくらなんでも、
好きでもない女に恋人のフリは頼まない」
「え……」
「俺、絶好の機会だと思ってるから。
覚悟しとけよ?」