戦国時代。武田家最期の当主、武田勝頼に十四歳で嫁ぎ、その最期の瞬間まで運命をともにした正室、北条夫人を主人公にしたお話です。
去年(こぞ)の春 逢えりし君に 恋ひしてし
桜の花は 迎へけらしも
相模の戦国大名、北条家の末姫として生まれた佐奈(さな)姫に縁談が持ち上がる。
相手は隣国、甲斐の武田家の当主、武田勝頼。
佐奈よりも十八も年上の相手であった。
不安を抱きながら嫁いだ佐奈を待っていたのは、
生涯でたった一度の恋だった。