玉響の桜〜愛し君へ〜後編

作者はる

時は戦国時代末期…九州最強と呼ばれた戦国大名・島津家。


島津家を継いだ夫である島津久保が無事に小田原征伐から帰還し、夫婦に幸せな日々が戻る。


幸せも悲しみも、共に分かち合ってこの戦乱の世を生きていこうと誓って。


だがそんな二人を引き裂く、豊臣秀吉による朝鮮出兵の足音が無常にも近づいてき…


これから毎年…



来年も再来年も



共に老いるまでこうして一緒に桜を見よう



待ち侘びたこの春をずっと共に迎えよう












はらはらと、盛りの桜が舞い散る。



それを見ながら彼は小さく微笑んだ。










…だが今は乱世



私は武家の名を背負う限り…

いつ死ぬかわからない









そう言ってゆっくりと開かれた彼の手から

桜の花弁が風に誘われて飛んでいく。




それを見送った彼は、優しい瞳で私を見た。


















——————例えこの命尽きようとも

私は永劫亀寿だけを想っている




だから何度死に別れても

またそなたと落花流水らっかりゅうすい夫婦めおととなり…



今日のこの日を迎えたい——————



 








この儚い戦国の世で



二人きりで桜舞い散る祝言の夜に交わした

永遠の約束を



貴方はずっと…叶え続けてくれている。






※史実を元にしたフィクションです