玉響の桜〜愛し君へ〜前編

作者はる

時は戦国時代末期…九州最強と呼ばれた戦国大名・島津家。

当主義久の後継者となる御曹司・島津久保と、後にその正室となる・亀寿姫は九州征伐の人質として共に上洛していた。

二人は惹かれ合い、桜咲く春の日に夫婦となり永遠の愛の約束を交わす。

毎年、必ず一緒に桜を見ようと。


そしてそんな二人と、後…


—————これから毎年…



来年も再来年も…共に老いるまで




こうして一緒に桜を見よう





待ち侘びたこの春をずっと共に迎えよう——












はらはらと、盛りの桜が舞い散る。



それを見ながら彼は小さく微笑んだ。










————だが今は乱世



私は武家の名を背負う限り…

いつ死ぬかわからない—————









そう言ってゆっくりと開かれた彼の手から

桜の花弁が風に誘われて飛んでいく。




それを見送った彼は、優しい瞳で私を見た。


















——————例えこの命尽きようとも

私は永劫亀寿だけを想っている




だから何度死に別れても

またそなたと落花流水らっかりゅうすい夫婦めおととなり…



今日のこの日を迎えたい——————



 








この儚い戦国の世で私達は



桜舞い散る祝言の夜に

そんな永遠の約束を交わした。






※史実を元にしたフィクションです