星影 とと

きこきこ自転車
波風を立てないようにして生きること。そんな、人に深く関わらないというルールを自分に課した少年が、恋をした。その日を境に彼の世界は少しずつ崩れ、「カクメイ」へと向かってゆく――……


 全体的にさらりとした感じの文章でとても読みやすいです。また、比喩の使い方が絶妙で、情景が浮かびやすく、主人公に感情移入しやすい点も素晴らしいと思います。

 個人的にとても好きなのは、主人公と恋のお相手の少女が、自転車で二人乗りをしているシーンです。

 「きこきこ」という自転車をこぐ音が繰り返されていて、それが待ち合わせに遅れてしまう主人公の間抜けさと相まって、移動する二人の心情を表す良い効果を生んでいると思います。

 告白場所が、星空と朝日の間、というシチュエーションなのも素敵です。これぞ青春ですね!

 爽やかな気分になりたい時に、是非読んでみて下さい。