金魚が鳴く晩に

作者はつ雪

徳川幕府が傾きつつある頃、新撰組が活躍する京に、島原遊郭で育った娘がいた。女を売ることを嫌悪する娘が、一人の若い侍に知り合う。幕末を舞台にした、男と女の愛憎劇。




ーー元治元年六月五日ーー





金魚が只ならぬ様子で泳ぐのが、卑猥な水音を立てた。


遠くで聞こえる祭囃子と非力な水音が重なり、姐さんの喘ぐ声を引き立てた。


男は巨体を持ち上げ、しなやかな曲線美を描く女の腰にでっぷりとした腹を擦り付けた。


臭そうな吐息とともに捲くしあげられる金糸の打ち掛けを、開いた障子の隙間から見つめていた。


金魚鉢に餌をやりながら、考えていた。


こんな男に荒っぽく奏でられるのはごめんだ。