月季花
どこか哀しく美しい愛、「命」の物語
私を、殺して――
見知らぬ場所で目覚めた記憶喪失の少女。
いくら手繰っても思い出せない過去への絶望。それでも少女は前向きに、今を見据えて歩き出す。
「あなたをずっと捜していた。お願い、私を殺して」
記憶を亡くす以前の自分が捜し求めていた青年。
とある《秘密》を持つ彼に与えられた「カノン」という名前を抱いて、やさしい日々を過ごす少女。
しかしあたたかな平穏は突如崩壊し、物語は衝撃の展開へ――
カノンの失われた記憶。
セツナに秘められた謎。
たくさんの謎が少しずつ明かされ、隠され、絡み合いながらラストに向けてひとつの形を作っていく。
待ち受ける結末は切なく、どこか美しく……
短編とは思えないほど作りこまれた重厚な設定と完成された世界観、壮美な描写は圧巻です。
「命」の大切さを伝えてくれる物語。
初期のものとは思えないほど深く魅力的な作品でした。
――自分を諦めないで――
心を洗う美しき幻想譚、是非ご一読下さい。