作品コメント
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- 月季花
どこか哀しく美しい愛、「命」の物語
私を、殺して――
見知らぬ場所で目覚めた記憶喪失の少女。
いくら手繰っても思い出せない過去への絶望。それでも少女は前向きに、今を見据えて歩き出す。
「あなたをずっと捜していた。お願い、私を殺して」
記憶を亡くす以前の自分が捜し求めていた青年。
とある《秘密》を持つ彼に与えられた「カノン」という名前を抱いて、やさしい日々を過ごす少女。
しかしあたたかな平穏は突如崩壊し、物語は衝撃の展開へ――
カノンの失われた記憶。
セツナに秘められた謎。
たくさんの謎が少しずつ明かされ、隠され、絡み合いながらラストに向けてひとつの形を作っていく。
待ち受ける結末は切なく、どこか美しく……
短編とは思えないほど作りこまれた重厚な設定と完成された世界観、壮美な描写は圧巻です。
「命」の大切さを伝えてくれる物語。
初期のものとは思えないほど深く魅力的な作品でした。
――自分を諦めないで――
心を洗う美しき幻想譚、是非ご一読下さい。 - 亜希
壮大な世界観と数奇な運命
実は私、ファンタジーというジャンルのお話を殆ど読んだことがありません。
ですから、ものすごく現実から乖離した話なのだろう…と先入観を持って読みすすめました。
確かに、登場人物、出てくる地名や用語にはファンタジーの世界を感じます。
が、ストーリーは意外に地に足がついている、というかある種のリアルを踏まえています。
カノンの壮絶な人生、そして衝撃の展開。
後半は息をつかせぬスピードで物語が進んでいきます。
ラストの皮肉で数奇な運命は涙を誘います。
深く哀しく、そして愛に溢れた壮大なファンタジー小説です。
おすすめです。 - 日下奈緒
悲しみの中に
偶然のように出会った3人に思えました。
でもよみ進めていくうちに、偶然の一つ一つが、必然のように思えてきて不思議に思いました
一番心が動かされたのは、カノンからのセツナへの手紙ですね
そういうことだったのか…と、全てが納得いくような感じでした
ぜひ読んでみてください - 麻井深雪
短編とは思えない濃い内容
短編とは思えない程、内容がぎっしり詰まっていてしかも深いお話です。
冒頭の出会いからカノンとセツナの悲しい運命を感じさせ、カノンが記憶を失いセツナやウィルと打ち解けて行く様子は優しく穏やかなのにどこか悲しい気持ちになりました。
可愛らしい意地悪を言うセツナ。
空色の瞳の無邪気な少年ウィル。
2人がとても魅力的で、主人公のカノンが心を許して行く様子にとても共感できました。
物語が動き出してから衝撃のラストまでは胸に痛く、悲しい思いで一杯になりました。
命の大切さ、生きるということの意味を改めて考えさせてくれます。
カノンの決断は最初、カノンはそれで満足かもしれないけど、セツナがあまりに辛すぎるんじゃないかと納得いかない部分もありましたが、最後の手紙を読んで初めて前向きになるセツナを見て、こうすることでしかセツナを救えなかったのかもしれないと思えました。
『自分を諦めないで』
カノンの想いが込められた一言が胸に響きました。
カノンがセツナのファミリーネームを名乗るところがセツナへの愛情を感じさせてとても好きでした。