麻井深雪

本格的文学作品
壮大なファンタジー小説です。
丁寧に綺麗な表現を選んで描かれる情景描写で物語の世界に入り込めます。

ファンタジーにありがちな難解な身分制度や専門用語も少なく、またそれぞれの神の名前なども何度も説明の文章が出てきたので頭に入りやすかったです。

テーマは胸に重く辛い部分も多くありましたが、主要三人のキャラがそれぞれ自分がどう生きるかを決めて行く過程に、共感したり大切なことに気づかされたりしました。

主要キャラの中で唯一抱えるもののないメルトの存在が良い役割を果たしていたと思います。
ティミスやアリシアの決断にもどかしく思う読者の気持ちを時に代弁し、時にこちらがハッとするような真理をついてくる彼女の台詞は心に響きました。

「幸せになるためにもがいて下さい。逃げないで下さい」

泣きたくなるような名言でした。
普段の緊張感がない態度も重い話の中で和みになりました。

そしてクライマックスのシーンの緊張感と感動は特に素晴らしかったです。

恋愛小説ではなく、本格的文学小説を探している方にはオススメです。