久遠マリ

そしてかれらは謎に迫る
遅ればせながら上篇に続いて中篇にもレビューを。

なかなか衝撃的な上篇のラストから続く中篇は、グローニアの謎を解明するという目的を中心に成り立っています。
そこに絡んでくる登場人物達の関係が、心情がこれまた劇的に変化するのです。作者さんの流麗な心情描写や世界の表現力も手伝って、これがまたたまらなく面白い。読み出したら止まらなくなります。

ただ、貨幣の単位が円だったり、ヨーロッパ風の世界観の中にまさかの平仮名仕様の謎解きが登場してしまったり、惜しいなあと感じる箇所が上篇と同じように幾つも見受けられました。
しっかりした文体で書かれたシリアスな場面にキャラクター達のコメディが入ると、言い様のない脱力感を覚えてしまったりも。


ですが、言語、地理、雰囲気などの面でもっと世界観をきっちりと練れば練るほどこの物語は更に輝きを増し、より魅力的になると断言出来ます。ファンタジー初心者を引き込むだけの実力が地の文に備わっていらっしゃるので、専門用語をもっと使っても絶対に大丈夫だと感じました。
更なる本格的を目指して頑張って戴きたいです。