星崎すず
黒から涙の透明へ
意表外の展開が繰り広げられる、心理的な短編です。
淡々と綴られる文体が趣深いです。
台詞や描写も過剰でなく適度で、重いテーマに拘わらず読み心地が良いです。
黒い傘などのアイテムも雰囲気を上手く作り上げています。
一見ドライな謎めいた女に潜む厚情と、大人びて見える少年の心の闇。
意外な出会いにより互いの内面が露顕し、静かに波が引くかのように穏やかな愛に包まれるラスト。
読後は清爽感と甘さがほんのりと広がり、とても素敵です。
視界を隠す黒から涙の透明に移り行く様子を表現した章タイトルも注目です。