理香
涙とやさしさ
葬儀の際にひとは泣く。
故人をしのんで?
行き場の無い言葉を
持て余して?
肉親であるがゆえに
愛憎もまた深いならば
流した涙の意味もまた複雑になる。
この短編にはその複雑な意味を、さらに複雑にする設定が
果樹園の果実のようにちりばめられていた。
その果実が苦いか甘いかは、読者の判断にゆだねられるが。
しかし、複雑に交差した設定と感情が終盤、見事な落着を見せる。
「やさしさ」と言うフィルターによって、少年の涙は、本来の「美しい悲しみ」を取り戻すのだ。
人間の本質の美しさの部分が描かれた
心に残る作品。