豆鉄砲ハトヲ

緻密な組み細工のごとき、物語の王道。
二人の王妃と一人の王の視点にて一国の興亡を綴るのだが、それはあくまでも外堀に過ぎず、作品の肝は混沌としながらも繊細に描かれる人間模様にある。

引きずる過去に足許をすくわれ、置かれている現在に惑わされる登場人物たち。
いかに高貴で、いかに潔白な存在に見えようとも、その内面をさらけ出せばただの弱者に過ぎない。強者に翻弄され続ける彼らに待つ過酷な結末。

反面、エニア王妃が二人の王子に託す未来には、王位継承者の気高さや気概など微塵もない。だが、これでいいんだと思わせる、暖かく優しく、何より自らの意思で生きていく力に満ちた幕引き。

全編随所に渡り、作者の並々ならぬ実力溢れる傑作。

腰をすえて楽しんでください。