こんがりすと

ありえないのに、ありえるのかもしれない、恐怖
私の中でこの物語は、タイトルを見た時から始まっていました。
僕と彼女とちくわ料理の話し?
僕と彼女と、ちくわを巡った何か平凡で壮大な事件?
そんな平々凡々な想像力だけが先走ってしまう。
頁をめくると、なんの事はない。
本当に僕と彼女とちくわのお話しでした。
"本当のちくわ"
それを徹平と同じく粗を探しながら、次第に受け入れて行く自分にも驚愕しました。

物を描く身として、こんなに自由で、それでいて現実に囚われる事が出来るのかと感動を覚えました。

そして最後の一頁。
短編の場合、一人称で始めたら(この場合徹平)その人物で書き上げた方が読み手としては最後まで物語に浸れるものですが……。
最後の一頁の、余りに突然な切り替えにより生じた壮絶な置いてきぼり感が堪らなかったです。
本当に徹平と同じく、放り出された気分です。

何だか和んで、ちくわ料理でゾッとして、最後になんとも言えない悲しさが訪れる、そんな贅沢なお話し。
有難う御座いました。