久万くまこ

瑞瑞しい
丁寧な文章で紡がれる一つのバレンタインの物語。
前半で主人公の寂しさや切なさが間接的に描かれていますが、その表現の仕方が美しいと思いました。言葉の並びや登場するキャラクターの台詞、最中さんだからこそ描ける世界がそこにありました。(私にはとてもあのような透明感のある文章は頭に浮かばない)
周りの人たちが温かだからこそ生まれる苦しみや切なさは、人なら誰しも感じる事だと思います。
それをしっかりと表現して、最後に素敵な婚約者さんとのやりとり。強がりな主人公の台詞に、本当に我慢していたんだなというのが伝わって、同時にとてもホッとして嬉しくなりました。そして主人公の選んだ婚約者さんが優しい人だというのが、あの会話の中で垣間見えました。
心が晴れやかになって、ちゃんと雪だと思えるようになったところも好きです。
会えない恋人達のバレンタインを描いた、瑞瑞しく透明感のある素敵なお話です。お勧めします。