NAO

ほんわかとあたたまる
冷えきった寒い午後に暖炉の近くでミルクティーをご馳走になってしまったような、甘くて少し苦くて、けれど心からポカポカと暖まるような、そんな読後感でした。

ごみだらけの真っ白な無機質な空と真っ直ぐな電線。そんな白紙だった楽譜の中に、少女の訪れによって、音符が加えられます。
ずっと頭の中で一人で会話をしていた主人公の世界に飛び込んできた少女と、何気無い会話を始めますが、実は、この少女こそ、主人公を現実に引っ張り出す天使だったのかもしれません。
少女と出会い、パパと去っていく姿を見送った主人公に沸き上がったのは、遠く離れた恋人への深い慕情。どこか淡々としていた主人公の感情が、少女の出現によって、引き出されてしまったのだと感じました。

そして想いが募り募った時に突如鳴った携帯電話。

愛しい人の声は、灰色のごみだった世界を美しい雪景色に変える力を、きっと持つ。

そんな優しいメッセージをいただける、素敵な作品でした。