あの日の涙

作者水香

「今まで、ありがとう。」


春になれば桜満開になる木の下で、君は突然思いもしなかった言葉を口にした。


「何?別れ話?もう冗談よしてよー。」


笑い話ではないと察しているにも関わらず、私はそう言って流そうとした。


でも、もう平常心ではいられない。


…私達の関係は、この桜の木が満開になる前に、先に散ってしまうのだ。





「さようなら。」







一滴も涙を流す事なく君は背を向けた。


その後ろ姿にさえも胸が苦しくなる。




「…さようならッ…」






結局私は、また独りぼっちになった。


涙が頬を伝って、繰り返し流れ落ちる。









あの日の涙を

私は忘れない