時渡りの姫

作者さくら

きらきらと陽光を受けて、


少女の美しい金の髪が風に踊る。


少女は美しい顔をしていた。


とてもきれいに着飾った少女は“小国の至宝”と呼ばれていた。


「・・・結婚式まであと何日かしら?」


かわいらしい小さな唇からは、鈴らかな声音。


「今は4月の中頃ですから・・・あと3ヵ月、ですね」


応えるのは黒髪のメイド。


「そう・・・なにもなければ、いいのだけど」


くすり、とメイドは微笑った。


「マリッジブルーですか?


まだ、早いですよ」


「違うわ…ただ、昔を思い出していただけよ」


・・・・・・・・・。


この世界、エリュシオン。


剣の国・魔法の国・獣の国、そして・・・聖王国。


大きく分けて3つの国が互いの利権を奪い戦を繰り広げていた。


そのどれにもあまり脅威と受け取られない国があった。


なんの旨味もない矮小な国・・・弱小国、と呼ばれた国が。


ノイシュヴァン王国ー


それが、少女の・・・“姫様”の国だった・・・。