月季花

優しい潮騒の中で
俺と彼女の家には、死に神とやらがまるで座敷わらしのように居座っている。

『僕、死に神なんです』
『は?』

料理上手な居候、死に神さん。
まるで大きすぎる座敷わらしのように
ただただ静かに居座っている死に神が、俺は嫌いで嫌いで仕方がない
「また肉じゃがか」……でも、げんなりと見上げるその顔は、何だか暗い。

「あの人、うちに居候してから笑わなくなってるよね」

そしてある日、彼女と死に神が消えた。

「……皆さんは、死に神をどういう存在だと思いますか」

死ぬのが怖い。
怖くてたまらない――そんな死に神に河織が放った言葉。

ずっと独りでいると心が真っ暗になってしまって、何も見えなくなるんですね。

ふわふわとしたつかみどこのない雰囲気が、だんだん人間味を帯びて、輪郭をくっきりさせて、しまいには人間臭くなっていく、溜めこんでいた鬱憤を晴らすかのごとく死に神に怒鳴り散らした河織の表情を想像すると、ちょっぴり泣きそうになりました。

そのまましんみり終わるのかと思いきや、くすりと笑みがこぼれる結末。
心温まる優しい物語、是非ご一読ください♪