京平
意欲的な作品
芸術は現実と虚構の境目にある、と何かで読んだ気がします。
ありそうもない設定からありそうな展開やテーマへ読者を誘う場合と、その逆と。そのバランスが作者のカラー、作風ではないかと。
「俺は男優」では二つのチャレンジを感じました。一つはその虚構の設定の仕方、もう一つは性描写。世の中のモラルから遠く離れた世界の中へ極めて常識的なモラルを適用させ、収めようとする極めて難しいチャレンジだったと思います。惜しいのは、その過程でテーマになるいくつかの材料が提示されながら、結論まで導けなかったところかな。(従来の価値観の男優との確執と棲み分け、女優たちとの関係性、女優を見守るマネージャーの心、など)
性描写については、随分踏み込みましたね。その処理を間違うと、単なるエロ小説になってしまうところを、上手く節度を保たれていると感心しました。表現力を磨くのに性描写はいいトレーニングと聞きました。私も場面描写の「質感」「温度」を高めたいと努力しています。
この作品は流星さんの幅を広げる材料になっていると思います。でも、そここに「流星さんらしさ」が顔を出しているのも面白い作品でした。