突然、見知らぬ男に連れて行かれた異界。
そこは吸血の民が支配する世界だった。
紗耶。十六歳。
実の両親を知らない以外は、ごく普通の女の子だと思っていた。
だが、彼女は事実を知る。自分が、異界の王女であることを――。
十六年前。
血に力が宿る王族に、双子が生まれた。
王子と王女。
混乱を避けるため、生後すぐに追放された王女こそが、紗耶だった。
そして今、王子は弱りつつあった。本来ひとりに継承されるはずの力が、半分しかないがために。
それゆえに、紗耶は連れ戻された。ふたつに別れた力をひとつにするために。
しかし、それはすなわち、片割れの――紗耶の死を意味していた…。
滅びゆく王国。
その行き着く先にあるものは――…。