森本万葉

活路無き欲望の底辺へ
心に潜む虚しくも強い欲望の背中を押すイオリ。それに忠実に狂っていく欲望の宿主たち。
SFやホラーのように現実と夢の狭間を描いた一話完結の作品。

甘い言葉に誘われ「こんなわけない」「必ず裏がある」「夢だ」と勘繰りながらも欲に溺れずにいられない人の弱さがリアルでした。

特に母の愛を得たい子供の話は、冷たい母親にひた向きな愛を注ぐ空くんの姿が痛々しかったです。素直さの中に現実を知った空君が母親の最期に、自らが渇望した愛を見失う場面は特に印象的でした。

話が一話ずつよく纏まっていてスピード感や言葉のリズムも良かったと思います。盛り上がるにつれてリズムが良くなる感じも良かったです。
そのぶん勢い付いたシーンで時折失速するのが気になりました。そういった作風なのでしたらすみません。

まだ、導入部のようなので今後本筋の展開が見えてくるのが楽しみです。