エレベーターでいつも会う人が好き。
生きてないけどーー。
ひっそりといつも佇んでいる感じで。
目が合うと、そっと微笑み返してくれる。
その穏やかな感じが好きだ。
思わず、見つめてしまう。
すると、必ず、鋭い声で言われるのだ。
「なに見てんだ、雨宮凛子(あまみや りんこ)」
ルックスだけは素晴らしいが、凶悪な先輩、伊月蒼汰(いつき そうた)。
彼がエレベーターに乗っているとき、凛子には、彼の横に、もう一人の彼が見えていた。
同じ容姿だが、表情が温厚なその人は、どうやら、蒼汰に憑いている霊のようだった。
その名もなき霊のことが気になる凛子。
だが、霊を見るついでに、蒼汰を見つめてしまっていたことが災いし、実は、伊月グループの御曹司だった蒼汰にいきなり、キスされ、一ヶ月以内に結婚するはめに。
金銭感覚のおかしい蒼汰に振り回されているうちに、うっかり一夜を共にしてしまうが。
夜中に目を覚ました蒼汰は、いつもの蒼汰とは違っていてーー。