社屋の三階から落下し、目を覚ました津田洸(こう)は、何故か、側についていてくれた総務の課長、悠木遥久(ゆうき はるひさ)に、
「顔に傷がつかなくてよかったな。
結婚式前なのに」
と言われてしまう。
結婚式前……?
……誰が?
「私、結婚するんですか?
誰と結婚するんですか?」
まったく身に覚えのない話に、洸がそう訊き返すと、遥久は、
「俺だろう」
と言う。
どうやら、落下したときに、部分的な記憶喪失になってしまったようだった。
しかし、全然、甘い雰囲気を醸し出してこない遥久に、本当に結婚するのか? と思ってると、今度は、同期の葉山に、
「お前、俺を恋人だって、お袋さんに紹介してくれるって言ったろう」
と詰め寄られてしまう。
洸が、式場に確認すると、確かに、一ヶ月後、洸の名前だけで、式場が押さえられていた。
記憶喪失の洸の、本当の花婿は――?