合鴨“82号”の冒険憚と、その命が終わる時までの物語。

高い空にイワシ雲、

秋がやってきた。



小金に実った穂は米となり、

ふっくらと炊きあげられ

ムッと鼻をつく甘い匂いを放つ。



「おかあさん、煮えたよ、カモ汁、煮えた!

 ねぇ、早く食べようよ」


「慌てないで、ほら。

 冷まさないとやけどをするよ。」



「「ふう」」と息を吹きかけ、飲み込まれた


そのひとくちのなかに



僕はいた――――――




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合鴨農法を知っていますか?


合鴨を水田に放ち、害虫を食べてもらうことによって無農薬で栽培する農法。


しかし、育った合鴨がどうなるか知っている人は

あまりいない。


育った合鴨は解体され、食肉として「処理」されるのです。



これは、合鴨82号の一生を描いた物語。