生きてきた世界は平穏で、なにも怖いことなんて起きてこなかった。
事件にあるような人殺しなんか、僕の周りでは起きることもなく、退屈な世界を過ごしていた。
でもそんな世界が、たった一つの偉業で、みるみるうちに姿を変えてしまったら、僕は、どうすればよかったのだろうか。
もしあの時、流されはしないで、断っていたら、違うものがあったのか。
例えばガラケーから、スマホへ。世界はそれが爆発的に広まり、気づけばもう電車でも、外でも、更には家でさえも、スマホをいじる人を見かける機会が増えていった。
人気を積み上げてきたものに、あれほどの事件がつめこまれているなんて、知るすべもない。
どんなに考えても、もう遅い。血に飢えたこの世界に、抗うことなんてもう、一人では出来ないのだから。