『悠也(はるや)』
…私が絶対に口に出して呼べない名前。
その愛しい人は今、仲間と共に煌めいている。
私の絶対に手が届かない眩しい世界で。
彼の全てを…
いつから、こんなに好きになってしまったんだろう…
彼は、生徒なのに…
私は、教師なのに…
私には、恋人がいるのに…。
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悠也の後ろ姿が、だんだん遠ざかって行く。
ゆっくりと空を仰いだ悠也の右腕が、何度となく顔を撫でる仕草をした。
突然、鼻の奥がツーンとして、涙が押し寄せそうになり、私はもう彼の後ろ姿を見ていることができなくなった。
堤防の階段を、私は急ぎ足で駆け降りる。
私は、その場にしゃがみ込んで、声を上げて泣いた。
(本文より)
2016/06/01~07/01
(2012/02著)