うのたろう

絡む身体、絡まないふたりの気持ち
主人公・タクトとマミは身体だけの関係だ。

放課後の保健室で身体を重ね、行為が終わると余韻にひたるわけでもなく、あっさりとさよならする。

高校生なのに、けっこうドライだという印象だが、このふたり、なかなか心は渇いていない。

むしろおし殺した涙で、たがいの心はびしょびしょになるほど濡れている。

タクトの一人称でプロローグから本編までが語られる。
タクトのマミに対する、決していえない熱い思い。

そこで物語が終わらず、エピローグのマミ目線。

彼女の心情でどんでん返しをくらう。

人の心の複雑さというやつだ。

物語が終わったあと、ふたりはいったいどうなるのか。

心がまじわる日はくるのだろうか。

作者の頭のなかには、その後のふたりの物語がありそうで、それを想像するのもたのしい。

ラストの一文が未来につながる余韻となって胸に残る。

そんな作品だった。