うのたろう

読みやすい文章とキャラづくり
読みやすい文章とキャラづくりがひじょうによかった。
とくに主人公・野乃花はいきいきと作品じゅうを走りまわっている。

物語は、声にコンプレックスを持つ体育会系の野乃花が放送部にはいることを決意する場面からはじまる。

彼女の動機はすこし不純。
入学式の日にスピーカーから流れた渋い声に心底惚れてしまったということ。

が。彼女はそれを恋とは知らない。

6畳ほどのせまい部室で、どんな恋物語が展開されるかは読んでからのおたのしみだ。

またわきをかためるキャラクターもいい。

野乃花の友人・優華や岳のそれぞれの立ち位置もおもしろいし放送部の先輩がた3人にいたっては、野乃花に心のなかであだ名をつけられてしまうほど。

文章は軽く明るくさらりと読める。
物語のスピード感・テンポもいい。
放送部を題材にしただけあって、発声のしかたにかんする知識もおもしろい。

個人的なベストはカラオケでの若(野乃花が恋している2年生の先輩)の選曲。

渋い声でねっとりとうたう「マイウェイ」(高校生なのに!)が今にもきこえてくるほどに迫力があった。

おすすめだ。